インハウス化は、企業が自社内でマーケティングや制作、システム開発などを行うことで、コスト削減やスピードアップ、ノウハウの蓄積といった多くのメリットを得る手法として注目されています。実際、ナイル株式会社の行った調査によると、おおよそ6割の企業がマーケティング業務のインハウス化(内製化)を希望していることがわかっています。一方で、専門人材の確保や教育コストなどのデメリットもあるため、事前に情報収集と計画立案を行うことが重要です。本記事では、インハウス化のメリットとデメリット、インハウス化の成功事例やインハウスと外注の違いをキーワードに、インハウス支援を行う理由から導入時に注意すべき点まで解説します。具体的な事例や実際のプロセスを紹介しながら、あなたの会社がインハウス支援を検討する際のヒントとなる情報をまとめました。
*ナイル株式会社の調査を抜粋
インハウス支援のメリット
まずは、インハウス支援を行うと、どのようなメリットが得られるのかを整理してみましょう。
1. コスト削減
インハウス化の主な目的として挙げられるのが、コスト削減です。従来は外注先や代理店への手数料が発生していた業務を社内で行うため、その分の経費を圧縮できます。特に広告運用やクリエイティブ制作のような継続コストがかかる領域では、内製化による費用メリットが顕著に表れます。ただし、専門ツールや人材採用に初期投資がかかる点は考慮が必要です。
2. スピード感の向上
外注や代理店に依頼していた業務を自社内で完結することで、コミュニケーションコストが大幅に減少します。修正や追加依頼が必要な場合、外部とのやり取りに時間がかかることも少なくありません。一方、インハウス化なら担当者同士の距離が近く、緊急の対応でもスムーズに進められるため、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できます。
3. ノウハウの蓄積
業務を内製化する最大の利点は、ノウハウが自社に蓄積されることです。外部企業に依頼しているときは、詳細なデータやプロセスが代理店にしかわからず、自社にノウハウが溜まりにくいケースが多々あります。しかし、インハウス化すれば各施策の成功例や失敗例、テスト結果などが社内ナレッジとして共有され、今後の戦略立案や施策改善に役立てやすくなります。
一方、インハウス支援にはデメリットやリスクも存在します。事前に把握し、対策を講じることが重要です。
1. 専門人材の確保が難しい
外注からインハウス化に切り替えるためには、専門知識を持つ人材が不可欠です。高度な広告運用スキルやクリエイティブ制作能力、システム開発スキルなどを持つ人材は市場価値が高く、採用が困難である場合が多いです。さらに、社内で同分野の経験者が少ないと、育成コストや研修プログラムも考慮しなければなりません。
2. 教育・研修コストが発生する
既存の社員に新しいスキルを習得させるには、研修やトレーニングが必要です。外部コンサルや講習を利用することでインハウス化をサポートする方法もありますが、その分のコストと時間がかかる点は無視できません。特に、一度に大勢を育成しようとすると、日常業務と研修の両立が難しくなることがあります。
3. 最新の情報を得にくい可能性
代理店や制作会社は多くのクライアント事例をもとに、最新の技術やトレンドを横断的にキャッチアップしている場合が多いです。一方、インハウス化すると社内だけで情報を収集・検証しなければならず、変化の速いマーケティングやIT分野では知識不足に陥るリスクがあります。必要に応じて外部ネットワークを活用するなど、情報収集力を保つ工夫が求められます。
インハウス化 成功事例/失敗事例
成功事例:広告運用の内製化
あるメーカー企業では、長年広告代理店に委託していた広告運用のコストが高騰していたため、インハウス支援を活用して内製化に踏み切りました。SNS広告や検索連動型広告などを自社メンバーで運用するための研修を受け、人材育成にも力を注いだ結果、広告費を約20%削減すると同時に、新規顧客獲得数が増加。さらに、自社内に運用知識が蓄積されたことで、キャンペーン施策を柔軟に実施できるようになりました。
失敗事例:デザイナー不在のクリエイティブ制作
一方、あるITベンチャーでは、社内にデザイナーがいない状態でクリエイティブ制作を全面的に内製化。結果として、クオリティが追いつかずリリースの遅延が発生し、かえってコスト増につながったケースがあります。外注していたころの品質とスピードを社内だけで再現するには、専任のクリエイティブチームが必要であることを理解しておらず、焦って内製化に踏み切ったことが失敗の要因でした。
インハウスと代理店利用の違い
インハウスと外注の比較は、一概にどちらが優れているとは言えません。各企業のリソース状況や成長ステージに応じた使い分けが重要です。
- インハウス
- メリット:コスト削減、スピード感、ノウハウ蓄積
- デメリット:専門人材の確保、教育コスト、情報不足リスク
- 外注
- メリット:専門性の高い人材に任せられる、最新ノウハウを導入しやすい
- デメリット:コミュニケーションロス、外注費用が高額になりがち
企業によっては、すべての業務を内製化するのではなく、コア業務だけをインハウスで行い、補助的な領域は外注するハイブリッド方式を選ぶケースも増えています。
まとめ
インハウス支援のメリットとしては、コスト削減・スピード向上・ノウハウ蓄積などがありますが、その一方で専門人材の確保や教育コスト、最新情報のキャッチアップといったデメリットも無視できません。導入前に、自社が持つリソースや組織体制、将来的に狙う成果と照らし合わせながら、どこまでをインハウス化するのかを明確にしましょう。
成功事例では広告運用の内製化でコストやコミュニケーションロスを削減できた一方、デザイナーが不在のままクリエイティブを内製化して失敗した企業もあります。**「どの領域で内製化が効果的か?」**を見極め、必要に応じて外注やコンサルサービスの力を借りるのも得策です。
インハウス化と外注、それぞれに一長一短があるため、企業のフェーズに合わせた最適な組み合わせを選ぶことが重要です。最終的な目的をしっかりと見据え、段階的に内製化を進めるなど、柔軟なアプローチを取り入れてみてはいかがでしょうか。